「赤ちゃんは、お父さんお母さんに絵本を読んでもらうことが大好き!それだけは、伝えるようにしています」
10月にオンラインで開催した「ブックスタート全国研修会2023」終了後の情報交換会で、広島県廿日市市 はつかいち市民図書館 司書の平井夏樹さんは、そう話してくれました。素敵な言葉を伝えてくれた平井さんに、研修会後、お話を伺いました。
すると、ブックスタートが大切にしている読みきかせの「体験」に関わる、思いがけない工夫をお聞きすることができたので、ご紹介します。
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廿日市市では、コロナ以降、ブックスタートを行っていた4か月児健診が小児科での個別受診に切り替わったため、生後10か月面談に機会を変更しました。健診で実施していたときは、ボランティアとともに、親子一組ずつへの読みきかせと絵本のプレゼントを行っていましたが、現在は感染対策のため図書館司書のみがブックスタートに出向いています。
しかし、対応できる職員は平井さんを含め2名。時間も15分と限られているため、以前のようには実施できません。そのため2022年度までは、複数組の親子に向けて一斉に事業の説明や読みきかせを行っていました。
「これで、本当にブックスタートと言えるのだろうか」
「ちゃんときっかけを届けられているのか」
平井さんたちは、そんなふうに感じていたそうです。
そこで2023年度からは一工夫。一斉に読むやり方は変えず、司書の読みきかせにあわせて、保護者の手元でも同じ絵本をひらいてもらうことにしたのです。
すると、意外にも保護者の反応に変化が見られたとのこと。これまで以上に、赤ちゃんの様子を嬉しそうに見ている方が増えたのだそうです。
中には、
「絵本でこんなに喜ぶんだ!」
と驚いた様子の保護者もいたということでした。
平井さんは、
「私が集団に向けて1冊の絵本を読むよりも、お父さんお母さんがご自身で絵本をひらいた方が、おひざの上の赤ちゃんの様子に気づきやすいみたいです。それに、赤ちゃんはやっぱり、お父さんお母さんが自分のために絵本をひらいてくれるのが一番嬉しいですよね」
とお話しされていました。
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絵本を楽しんでいる赤ちゃんの様子を見たり、一緒に楽しむ「体験」が、持ち帰った絵本を家庭でもひらく何よりのきっかけになります。
今できるやり方の中で工夫されている廿日市市のアイディアから、そんな「体験」の本質を改めて感じることができました。