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自治体の方へ

「心の密」で自治体の悩みを解消~ガイドライン制作への思い~/コロナに負けない!12

「どうにかして、体験を届けていきたい」

新型コロナウイルスの感染が広がり始めた2020年春以降、多くの自治体から、「絵本だけを親子に手渡すのはブックスタートの趣旨に合わない。どうしたら読みきかせができるだろうか?」という相談が寄せられました。こうした自治体の悩みを解消するため、2021年10月に『ブックスタート事業における感染症対策ガイドライン』を発行しました。
今回は、ガイドライン作成に至った経緯や、内容を検討する中で私たちが大切にしたことについて、お伝えします。

 

読みきかせの「体験」は欠かせない

スタッフが絵本をひらいて語りかける。
すると、赤ちゃんが絵本や読み手をじっと見つめる。声をあげる。手足を一生懸命動かしてにっこり笑う……
保護者は、「こんなに見てくれるんですね」と嬉しそうに我が子を見ている……
そんな様子が、ブックスタートではたくさん見られます。

絵本をただプレゼントするのではなく、こうした「読みきかせの体験」とともに手渡す理由は、「家庭でも親子で絵本を楽しんでほしい」と願うから。絵本と一緒に「楽しさ」を持ち帰ってもらうことが、「読んでみよう」と思う何よりのきっかけになるからです。

「読みきかせの体験」は、ブックスタートには欠かせません。しかし、親子と近い距離で向き合い、「読みきかせの体験」を届けることは、感染リスクを伴います。コロナ禍では、「感染対策」と「読みきかせの体験」の両立が、自治体の課題なのです。

自治体がその課題に取り組みやすい環境を整えていくために、私たちNPOにはどんなサポートができるのか、検討を重ねました。そして、コロナ禍でも安全に「読みきかせの体験」を届けるための拠り所となる情報を、ガイドラインという形でまとめ、自治体に活用してもらおうと考えたのです。

 

三密回避でも、心は密に

ガイドラインを作成するにあたり、まずはコロナ禍のブックスタートで大切にしたい基本姿勢は何かを考えました。

SNSに寄せられた保護者の声には、
「感染が不安。対策を万全にしてもらえると安心して参加できます」
「絵本を渡されただけだったので、読みきかせの仕方が分からず必死で調べました」
など、感染への不安を抱える様子や、「読みきかせの体験」の必要性が感じられる言葉もありました。

また、事業に携わる自治体職員やボランティアからは、
「コロナ禍だからこそ、“ 顔 ”が見える関係性を築くことを大切にしたいです」
「感染はもちろん不安だけれど、大変な状況で子育てをする保護者を応援したい気持ちがあります」
と、コロナ禍のため深刻化する子育て環境を心配する声や、ブックスタートの目的を果たす重要性を訴える声が寄せられました。

こうした声から、私たちは、コロナ禍における実施のポイントは「心の密」なのではないかと話し合いました。感染を防ぐため「三密」の回避を徹底しながら、これまで読みきかせや対話によって得られていた親子との「心の密」を、これまで以上に意識するという、2本柱で具体的な対策を決めていくことが大切だと考えたのです。

この基本姿勢を念頭に、お茶の水女子大学名誉教授で小児科医の榊原洋一先生監修のもと、ブックスタートの場面ごとに感染対策をまとめていきました。そして、「心の密」を大切にする工夫として、例えば

保護者に感染対策をお願いするだけでなく、「お待ちしていましたよ」など歓迎の言葉をかける
マスクを着用していても楽しさを伝えられるよう、読みきかせの前にまずは赤ちゃんや保護者の目を見てあいさつをし、お互いに安心できるようにする

など、心の距離が近くなる工夫を記載しています。

 

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コロナ禍でも、ブックスタートに携わる皆さんが、赤ちゃんの幸せを願う気持ちは変わりません。手渡した絵本が、親子で心ふれあうひとときを持つきっかけになってほしい。大切につないできたその願いを、これからも実現していくために、私たちNPOに何ができるのか、これからも自治体の皆さんと情報を共有しながら、考えていきたいと思います。

ガイドラインは、「自治体の方へ」より無料でダウンロードできます。(こちら から)
※当NPOとお取引のある自治体の方は、「お取引自治体ログイン」からダウンロードしてください。