読書バリアフリー。
皆さんは、「バリアフリー」と聞いて、何を最初に思い浮かべますか?まず点字ブロックや車椅子用スロープなど、物理的な面でのバリアフリーを思い浮かべるのではないでしょうか?
しかしバリアフリーには、物理的な面だけでなく、文化や情報面でのバリアを取り除く取り組みもあります。その一つが、「読書」における「バリアフリー」です。今回、「読書バリアフリー」について学ぶため、シンポジウム「語り合おう!読書バリアフリーのこれから」に参加しました。
冒頭では、今年6月に、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」が施行されたことが紹介されました。この法律は、障害のある方の読書の環境を整え、本を「買う自由」や「借りる権利」を確立して、いつでもどこでも、それぞれのニーズに応じた方法で読書ができるようにするためのものです。
では実際に、読書をする時にどんなことがバリアになっているのか。またそのバリアを取り除く対策例にはどんなものがあるのか。障害当事者でもある3名の講師の方がお話しくださいました。
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神山 忠さん(岐阜市立島小学校主幹教諭)
読字障害・ディスレクシアの障害を持ち、現在、小学校教諭として勤務されている神山忠さん。文章を意味で区切って読むことが苦手で、学齢期にとても苦労をされました。
例えば、黒板に「きょうはてんきがいいのでそとでたいいくをします」と書いてあった時は、何度も読んで文章を暗記して、やっと理解できる段階になったそうです。でも、「きょう は てんき が いい ので そと で たいいく を します 。」と、分かち書きになっていたり、漢字が入っていたりすれば理解がしやすいということでした。
障害による困難と対策について具体的に紹介してくださり、障害によって生き辛さを抱える子どもたちの現状を知ることができました。その子その子の生来のものを認め合い、誰もが遠慮することなく共に学びあえれば、豊かな社会になるのではないか、とお話しされたことが心に残りました。
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西田 梓さん(Mothers’Cafe 主宰)
全盲の西田梓さんは、本が好きで、盲学校の図書室にあった点字の本をよく読んでいましたが、図書室には限られたものしかありませんでした。そこで地域の図書館から借りた本を家族に点訳してもらって、読書をしていました。現在は主にDAISY(デジタル録音図書)で読書を楽しんでいますが、本の発売日を知り、読みたいと思っても、音訳には時間がかかるのですぐに読むことができないのが残念だということでした。
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見形 信子さん(神経筋疾患ネットワーク代表)
肢体不自由の見形信子さんも、子どもの頃から本が好きだったとのこと。障害の進行によって自分でページをめくるのが困難になり、読書から遠ざかってしまったそうですが、DAISYによって読書が再びできるようになりました。身体障害の方がDAISYを楽しめるということを、図書館はじめ色々な人に知ってもらって、気軽に利用できる環境になって欲しいとお話しされたことが印象的でした。
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シンポジウムは、とても学びの多い会でした。
ブックスタートは、「すべて」の赤ちゃんとその保護者を対象としていますが、「すべて」の中には、障害のある赤ちゃんや保護者も含まれます。私たちも、様々な観点から、ブックスタートにおける障害のある方への対応について考えていかなければいけないと改めて感じました。
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▼連載「障害のある方への対応を考えるために」その他の回を読む
1. 読書バリアフリー(1)※本稿
2. 読書バリアフリー(2)
3. 「てんやく絵本」との出合い
4. 障害ってどういうことだろう?
5. 障害のある赤ちゃんや保護者について
6. 目が見えない、見えにくい赤ちゃんと絵本(1)
7. 目が見えない、見えにくい赤ちゃんと絵本(2)
8. 聞こえない、聞こえにくい赤ちゃんと絵本 ※本稿
9. 聞こえない、聞こえにくい保護者と絵本
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*「障害」の表記について
当NPOでは、「障害」の原因が「個人が持つ心身機能など=個人モデル/医学モデル」ではなく、機能障害に対応できない「社会の側にある=社会モデル」という「障害者権利条約」の考え方に基づき、「障害」及び「障害のある」と表記しています。