僕の娘は先月、ようやく一歳になりました。生まれたばかりの彼女は、あまりにも小さいうえに首も座っておらず、僕は抱っこするのにも、お風呂に入れるのにも、ドキドキして、毎日のお世話はかなりヘッピリ腰でした。
僕にはオッパイもついていませんし、仕事にもいかなくてはなりませんから、会える時間も限られたし、お風呂も、抱っこも、何一つ妻よりうまくできない僕が、どう頑張ってもお母さんの存在には勝てないことがあるのは認めざるを得ませんでした。
それから一年も経っていませんが、最近では、やっと僕の立場も少しずつ確立されてきました。そのひとつが「寝る前の絵本タイム」です。それが確固たる「お父さんの役割」になったのは、ある絵本がきっかけです。『ぴょーん』(作・絵:まつおかたつひで/ポプラ社)というあまりにシンプルな題名のついたその絵本は、その内容もシンプルで、「かえるが・・・ぴょーん」「こねこが・・・ぴょーん」と、いろんな生き物が、「ぴょーん」とページをめくるごとに跳ぶ、という絵本です。
その絵本は、僕の実家がある札幌の本屋さんで、我が家へ迎え入れられました。その日の夜、僕は「カエルが・・・ぴょーん」というのに合わせて、彼女の真上まで絵本をギュッと持ち上げました。すると、彼女は「キャハハハ!」と声をあげてカエルのジャンプする絵を嬉々として見上げました。続いて「こねこが・・・ぴょーん!!」「キャハハハハ!!」気をよくした僕は、次のページを開くと同時に、高々と絵本を持ち上げて「いぬが・・・ぴょょょょょぉぉぉぉ―――ん!!!」「キャハハハハ!!」勢いあまって彼女はお布団の上にそのまま引っくり返ってしまいました。
あのときのことを思い出すと、どんなに大変なことに取り組んでいても、頬が緩んでしまいます。僕のオッパイは未だに出ませんが、とりあえず、絵本の時間だけは妻には負けない彼女との大切な時間です。
※本稿はブックスタートニュースレター20号へのご寄稿を転載したものです。