2018年11月13日、三重県総合文化センターにて開催したブックスタート研修会in三重。当日の様子をご報告します。
■プログラム
<AM>
・ブックスタートの今~全国の実践から見えてきたこと~(NPOブックスタート)
・事例紹介 三重県 いなべ市/多気町
<PM>
・ワークショップ「ブックスタートを語りあおう」
■事例紹介
三重県は、0歳児健診が病院での個別受診となっている自治体が多く、ブックスタートも、それぞれの地域で機会を設けて実施しているケースが多くあります。事例をご紹介いただいたいなべ市、多気町では、子育て支援センターを主な会場としてブックスタートを実施しています。
事例1.いなべ市 「途切れのない子育て支援」のひとつとして
笠間子育て支援センター「遊・友・YOU・チャイルド」 出口 洋子さん
いなべ市では、少子化や核家族化などにより、周囲から孤立し、地域社会とつながりを持ちづらい子育て家庭の状況を把握し、解消するために、「途切れのない子育て支援」に力を入れています。その一つが、子育て支援センターを会場として、6か月児の親子を対象に行っているブックスタートです。
親子を迎えるのは「子育て応援団」の市民ボランティア。自己紹介やわらべうたで参加者同士で交流したあと、絵本の読みきかせをしたり、子育てについて話をします。6か月頃までは、赤ちゃんのお世話も大変で外に出る機会が持ちづらいと思いますが、ブックスタートをきっかけに‟一歩“踏み出すことで、育児の不安やとまどいを解消してほしい。相談できる場所が身近にあることや、地域が子育てを応援していることを知ってほしい。そうした願いがブックスタートには込められています。
子育て支援センターでのブックスタートに参加できなかった家庭には、職員が家庭訪問を行っていますが、絵本を持参することで自然な形で受け入れてもらえゆっくりと話ができるため、その後の支援にもつながっています。また、この訪問をきっかけに、子育て支援センターを利用するようになって地域とつながりを持つことができ、保護者が前向きになれる姿が見られるようにもなりました。
親子と地域をもっともっとつなげて、子どもたちが、いなべ市で愛され、大切にされる経験を積み重ね、このまちで育って良かったなと感じてくれるよう、事業を続けていきたいと思います。
▽いなべ市の発表スライドより
事例2.多気町 赤ちゃんの笑顔を真ん中に~赤ちゃんが笑顔になれるまちづくり~
多気町立勢和図書館 林 千智さん
多気町では、4か月から12か月児を対象に、子育て支援センターでブックスタートを実施しています。
ブックスタートでは、親子一組ずつに向けて、わらべうたをうたったり、絵本を読んだりしています。何度回を重ねても、赤ちゃんと保護者に、楽しいひとときや喜びを分かち合ってもらえるといいな、という思いでいっぱいになります。親子でそうした関係性を積み重ねることで、赤ちゃんは愛着関係を築き、ことばを獲得し、人への信頼を育んでいきます。それは、保護者にとっても幸せなひとときとなりますよ、とお伝えしています。
しかし、子育て支援センターでのブックスタートに参加できずに、出会えない方もいます。そうした方には、①図書館で手渡し ②1歳半健診で手渡し ③保健師からの電話案内 ④保健師の家庭訪問に図書館員が同行して手渡しなど、様々なアプローチをしています。
子どもにとっての読書は「生きる杖」です。それを保証するのが司書の役割です。聞く力を育て、読む力、考える力につなぎ、生きていく安定感としての根っこを育んでいく。そのための最初の幸せな体験として、語りかけてもらうことが大切です。その大切さと楽しさを、ブックスタートですべての人に伝えたいと思います。
また、保健師も、顔の見える関係をつくり、不安を感じたらすぐに相談していいんだという安心感を、ブックスタートをきっかけにすべての人に持ってほしいと願っています。だから「すべて」を目指して様々なアプローチを行っています。
ブックスタートの可能性は本当に大きいと思います。子守歌、わらべうたを歌うことや声をかけてあやすことと同じように、絵本と出合ってほしい。その思いを具現化したブックスタートは、一人一人の大人の気持ちをも揺さぶります。あたたかな声やことばで、多気町の子どもたちの成長を縦につなぎ、その周りの大人たちの関係も柔らかく横につないでいけたらと思います。
▽多気町の発表スライドより
■ワークショップ「ブックスタートを語りあおう」
4~5人のグループに分かれ、途中でメンバーを入れ替えながら、テーマに沿って意見を出し合い、お互いの思いや経験を共有。最後に、全員が一つの輪になって、それぞれの気づきや感想を発表しました。
<参加者の感想>
・他の人たちの悩みも聞かせてもらって、ちょっと心が軽くなりました。
・「ブックスタート」で一日研修……と思っていましたが、あっという間の一日でした。
・今日参加していなかったら、私は配付率を100%にすることだけを目指していたかもしれません。様々なことを学ばせていただきました。