独身時代はもとより、妊娠中も絵本とは全く縁のない生活を送っていたのが一変し、今や我が家のリビングルームにある本棚には、1歳5か月になる娘の絵本が所狭しと並んでいます。それらの大半は、『はらぺこあおむし』、『はじめてのおつかい』、『ふうせんねこ』、『ぐりとぐら』等、私自身の子ども時代の思い出がたくさん詰まったもので、開くと古い本の匂いとともに懐かしい記憶がよみがえってきます。
毎晩ベッドの中で母親に読んでもらったこれらの絵本の数々は、自分が母親となって改めて読み返しても微笑ましくなるものばかりで、幼い娘を膝の上にのせて一緒にページをめくるたび、彼女のあたたかい体温や、やわらい肌を何度となく体に感じては、母としての幸せをかみしめています。
娘のお気に入りの絵本は色々あるのですが、私のお気に入りは、『ぎゅうってだいすき』(作:きむらゆういち/偕成社)です。「こいぬのコロはことりのピイちゃんがだいすきだから・・・“ぎゅう~”」に始まり、好きな人(動物)を次々に“ぎゅう~”と抱きしめていき、最後にママがゆうちゃんのことを「だいのだいのだーいすき」と言って抱きしめておしまい、という単純な構成なのですが、この本を読むと、「ぐう~」といいながら娘が満面の笑みを浮かべて私を何度も何度も抱きしめてくれるのです。それが嬉しくて毎日何回も二人でこの本を読んでは“ぎゅう~”をやっています。
こんな調子で日々過ごしているので、生まれて一年半足らずで一生分の親孝行をしてもらったような気がします。もうすぐ第一次反抗期ですが、娘の純粋な笑顔をこうして毎日独り占めできたことを思い出し、「立派に自己主張できるようになったんだな」とおおらかに受け止めることができればと思います。
これからも時間の許す限り(そして、娘が嫌がらない限り)、毎日少しでも娘と一緒に絵本を楽しみたいと思います。そしていつの日か、娘に子どもができた時には、これらの思い出(覚えていてくれるかな?)とともに、彼女にもまた、絵本を通して親になった喜びを存分に味わって欲しいと願っています。
※本稿はブックスタートニュースレター30号へのご寄稿を転載したものです。