ブックスタート事業開始から20年を迎えた東京都西東京市。20年前に市から絵本を受け取った市民に、アンケートとインタビューを行った事例をこちらで紹介しました。
西東京市のインタビューを受けた前北梨音さんと、母・真紀さんに、改めて親子の絵本の時間についてお話を伺いました。
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―家族で絵本を楽しんだ記憶はありますか?
(梨音さん)私と、3つ下の弟と、7つ下の妹とで、3人いっしょに読んでもらっていました。夜寝る前の習慣で、私が小学校高学年くらいになっても続いていたので、記憶に残っています。
(母・真紀さん)私は、娘が弟と妹に読みきかせをしてくれていたのもよく覚えています。生まれたばかりの弟が泣いていると、そばに行って絵本を見せていました。とはいえまだ3歳なのでぎこちなくて、たぶん弟には見えていないだろうなっていう角度だったり(笑)
(梨音さん)弟に読んだ記憶はあまりないのですが、妹には読んであげたことを覚えています。
1歳ごろの梨音さん
― 当時楽しんだ絵本は、まだご自宅にありますか?
(母・真紀さん)たくさん残しています。ときどきひらいてみると「あ、この落書きは梨音だな」とか「これは弟がかじった跡だな」と思い出します。絵本の言葉が、日常の会話で使われていたこともなつかしく覚えています。だから、なかなか捨てられません。
― いっしょに絵本を読んだからこその、言葉のやり取りがあったんですね。
(母・真紀さん)どんどん記憶から消えていってしまいますが、物として絵本が残っていると「この本でこんなことしゃべったな」と思い出します。絵本は、大きさや硬さが全部違いますよね。触ってみると、その当時を思い出せる気がするんです。
― 絵本の時間は、今考えるとどんな時間でしたか?
(梨音さん)当時は、絵本を読んでから寝ることを当たり前に思っていました。でも、今振り返ってみると、それが家族の交流になっていたのかなと思います。私の家族は、本当に仲がいいんです。本の時間も、家族の仲が深まるきっかけになっていたのかもしれません。
(母・真紀さん)きょうだい3人、もちろんケンカもありました。でも、寝る前に同じ絵本を読んでいると、そこで何か共有できるものがあるのでしょうか。仲直りはしていなくても、ちょっと心が落ち着いて、安心して眠れるというか…。そんな時間にもなっていました。
― ブックスタートという活動について、どう思いますか?
(梨音さん)読んでもらったり、きょうだいに読んだりして楽しかったことが、思い出に残るんですよね。なので、小さい頃に絵本をもらえるのは、すごくいい取り組みだなと思います。
(母・真紀さん)例えばくだものの絵本でも、「これがスイカだよ」と絵や言葉の意味を教えるだけじゃなくて、「じゃあ食べてみようか」と食べる真似をしたり、「甘いね」「美味しいよ」と言葉をかけたりしていたんですよね。赤ちゃんには意味がわからなくても、絵本をきっかけにコミュニケーションを楽しんだり、一緒に想像しながら遊んだりできるきっかけをもらえるのは、すごくいいなと思います。
― これからブックスタートを経験する人に、メッセージをお願いします!
(母・真紀さん)今、身の回りにはデジタル機器が増えていると思いますが、実際に触れて、ページをめくることからコミュニケーションがはじまるのが、絵本のいいところだと思います。家族のふれあいの時間にもなりますよね。これからブックスタートを受ける人にも、そんな時間を楽しんでほしいです。
(梨音さん)きょうだいで一緒に読んだことが、私にとっては一番の思い出になっています。お母さんだったり、お父さんだったり、おじいちゃん、おばあちゃんだったり、親戚の方だったり……いろいろな周りの人と、一緒に絵本を読むきっかけになってもらえればいいなと思います。
― 梨音さんが今頑張っていることは何ですか?
(梨音さん)中学からサッカーを続けています。大学ではイギリスとアメリカの文学を学んでいて、英語教育に興味があるので、英語教員を目指しています。
― 応援しています!最後に、梨音さん・お母さんは、お互いにとってどんな存在ですか?
(真紀さん)宝物です!
(梨音さん)一番の理解者であり、最高の母親です!
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笑い合ったり、ケンカの後のぎこちなさをほぐしたり――
毎日当たり前にひらかれていた絵本一冊一冊には、母・真紀さんが「なかなか手放せません」と語るかけがえのない思い出が刻まれていました。