2023年9月、兵庫県三田市のブックスタートで、コロナ禍のため休止していた読みきかせが再開しました。すると、健診に思わぬ効果が生まれたといいます。事務局を担当する、子ども政策課の堂本さんにお話を伺いました。
ボランティアが案内係を兼務することで効率よく
9か月児健診の中でブックスタートを行う三田市では、コロナ禍で休止していたボランティアの活動を再開するに当たって、読みきかせを健診の待合スペースで実施する新しい方法を検討していました。 そのためには、
*健診の流れが滞らないこと
*会場運営に影響がでないこと
*密を避けること
という健診担当側の課題と、
*より多くの親子へ、読みきかせの楽しい体験とともに絵本をプレゼントする
という、ブックスタート担当側の課題をどのように解決するか、コロナ5類移行直後の状況下で、話し合いを何度も重ねたといいます。
その中で生まれたアイデアが、ボランティアに健診の待合スペースの案内役を担ってもらう方法でした。三田市では、健診の待合用の広いスペースに2つのコーナー(離乳食・歯科)が用意されています。しかし、積極的に立ち寄る保護者がいる一方、関心が向かない人もいる状況でした。
そこで、読みきかせを3つ目のコーナーとして同じ会場内で実施し、ボランティアに各コーナーへの案内役を担ってもらうことにしたのです。すると、以前よりも多くの親子が立ち寄るようになりました。
また、保護者が問診の声掛けに気付くことができるよう、ボランティアに声掛け役も担ってもらい、より円滑な健診運営に繋がるようにもなりました。
密を避ける方法としては、マットコーナー以外にも、イスに座って読みきかせができるコーナーを作り、親子を分散させることで、解決を図ることができました。
離乳食コーナー
歯科コーナー
ブックスタートの読みきかせを行うコーナー
読みきかせの再開により、絵本選択の時間が短縮
さらに、もう1つ嬉しい変化がありました。
三田市では、健診の最後に受付で絵本を選んでもらい、5冊の中から1冊をプレゼントしています。読みきかせが休止していたころは、「どれにしようかな」と悩む保護者が多く、受付に列ができて待たせてしまうこともありました。
しかし、読みきかせを再開したことで「うちの子はこの絵本を気に入っていたので」と即決する保護者が増え、スムーズに受け渡しできるようになったのです。
笑顔が広がる健診会場に
ボランティアの活動再開に向けて保健師との話し合いを重ねていたのは、担当の堂本さんが子ども政策課へ異動して1年目のときでした。
「当初は、コロナ前からあった課題を解決する方法で、読みきかせを再開することを考えていましたが、こんなにさまざまな効果が生まれて、驚きとともに嬉しく思っています。話し合いを重ねたことで、事業運営でそれぞれが大切にする考え方も知ることができ、各事業への相互理解も深まったと感じています。
何より、親子とボランティアさんが喜んでくれています。ボランティアさんが親子との楽しい時間を作ってくれるので、会場に笑顔が増えました。三田市では、ブックスタート後に毎回保護者へアンケートを行っていますが、“マットで子どもと一緒に絵本を楽しみながらくつろげるスペースがあり、ほっと一息つくことができる”という声も多く、事業の満足度も向上していると感じます。これからも、保健師やボランティアの皆さんと協力して、よい活動にしていきたいです」
読みきかせの再開、そして、より安心安全な健診会場づくりのため、ブックスタート事業担当、健診担当、市民ボランティアが協力する三田市。その連携の裏側には、事務局担当者の粘り強い行動と、「活動をよりよくしたい」という思いがありました。