NPOブックスタート Bookstart Japan

自治体の方へ

[報告] 多言語対応絵本 試験実施報告会 ~考えてみよう。外国人親子に「絵本」でできること~

「自分の国の言葉がでてきて驚きました。嬉しいです」
ブックスタートで「多言語対応絵本」を受け取られた保護者の言葉です。

当NPOでは、日本語の絵本に翻訳シールを貼付した多言語対応絵本を企画・制作。2023年8月から2024年2月まで、試験的にブックスタート実施自治体に販売提供しました。
その試験実施から見えてきたものを共有し、外国人親子のために「絵本」でできることを多くの人と一緒に考えたいと、2024年7月5日(金)、オンラインで報告会を開催。全国各地および海外から190名の参加がありました。

■ プログラム
1.講演
「多文化共生社会を創る~大久保図書館の取り組み」
(東京都新宿区立大久保図書館 館長 米田 雅朗さん)
2.報告
「2023年度 多言語対応絵本 試験実施 ~企画から実施結果まで」
(NPOブックスタート)
3.報告
「多言語対応絵本の配付から見えてきたこと」
(山形県真室川町・茨城県牛久市・愛知県蒲郡市)
4.質疑応答

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◆米田雅朗さん 講演

報告に先立ち、地域住民の3割以上が外国籍という新宿区大久保図書館の米田雅朗さんにご講演いただきました。
タガログ語を話す少年と出会い、母語によるアイデンティティの確立を肌で感じた経験が、多文化サービスに重点的に取り組むようになった原点だという米田さん。38言語、2,900冊*1にのぼる資料の収集や、外国語によるおはなし会*2を中心に、図書館の多文化サービスの取り組みについてお話しくださいました。

「『お国はどちら?地球です』が、大久保図書館のキャッチコピーです。国を越え、人種を超え、誰も置き去りにしないという理念のもと、目の前の一人ひとりを大切にし、人と人とがつながりあっていく図書館を目指していきたいと思っています。」と熱く語ってくださいました。
*1 2023年4月現在
*2  毎月第3もしくは4土曜日に開催(コロナ禍以前は毎週開催)

◆NPOブックスタート 試験実施結果報告

ブックスタート赤ちゃん絵本のうち、翻訳とシールの貼付に​適したテキストや構成、レイアウトを備えた6タイトル​について、著作権者、出版社に許諾を得て、多言語対応絵本を制作

当NPOからは、試験実施を行うに至った背景や、具体的な実施方法、絵本を購入した自治体の声などを報告。
外国人親子に「母語の絵本」という選択肢を用意することの意義の大きさや、解決しなければいけない課題、その解決にはさまざまな人の力が必要であることをお話ししました。
※多言語対応絵本について、詳しくはこちら

◆山形県真室川町/茨城県牛久市/愛知県蒲郡市 事例報告

実際に多言語対絵本を対象者に手渡した3自治体からは、対象者の様子や母語の絵本を手渡す意義などについて報告がありました。

「あなたたち親子をいつも見守っていますよというノンバーバルなメッセージを示せたことで、さらに信頼関係が強まったと感じました。また、ボランティアや図書館職員が母語の絵本を手渡すことで、地域とのつながりを感じてもらえると思います」(真室川町福祉課 佐藤里保さん)

「自分や我が子のための絵本という気持ちが強くなり、家庭での読み聞かせによりつながると思います」(牛久市立中央図書館 星野美紀さん)

「なかには、多言語対応絵本ではなく日本語の絵本を選ぶ方もいます。いろいろなご家庭があるので、外国の方にはこうしましょうと一律に決めるのではなく、それぞれのニーズに応じた対応をしていくことが大事だと思います」(蒲郡市立図書館 田中優子さん)

 

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当NPOでは今回の試験実施の結果をもとに、さまざまな立場の人が互いの経験やアイデアを持ち寄り、母語の絵本の出版・制作・普及について考えていく場を作りたいと考えています。ご関心やアイデアがございましたら、ぜひお知らせください。

※報告会の詳細については、2024年10月発行のニュースレターでご紹介予定です。