2022年11月29日、「ブックスタート全国研修会2022」をオンラインにて開催しました。本研修会は年に一度、ブックスタートに関心を持つ様々な立場の方がその思いを共有する貴重な機会です。今回は、関係者が集まって視聴した自治体も含め、全国46都道府県と海外から約830名の参加申し込みがありました。
参加者からは、「日頃の活動の意味を改めて確認する意味でも、また子供をよく理解する上でも大変勉強になりました」「実例を交えたお話はとても分かりやすく、楽しく聞くことができました」「今後少し自信を持って取り組めそうな気持ちになりました」「行政と市民が一体となって子育てをしていくことの大切さを改めて感じました」といった感想が聞かれました。
*本研修会の模様を当NPO YouTubeチャンネルで見逃し配信中です!(2023年2月28日まで)
■ プログラム
1.講演
「絵本は親子のゆりかご」(伊藤明美さん 社会福祉法人芳雄会図書顧問・司書)
2.報告
「コロナ禍で見えてきたもの ~全国の実施状況から~」(NPOブックスタート)
3.事例発表
「えがお・ふれあい 心地よい時間を届けたい ~集団健診での実施を通して~」(宮城県多賀城市 生涯学習課/子ども家庭課)
「子育ては一人じゃないよ みんなのちからをかりていいんだよ ~訪問事業の現場から~」(兵庫県川西市 こども支援課)
4.トークセッション
■ 伊藤明美さん 講演
保育園の入り口にある絵本コーナーには、伊藤さんがその日に子どもたちに読んだ絵本も置かれています。ある女の子は、お迎えに来たお母さんをそこに連れていって、「これ読んで」とせがみます。なぜ子どもは、読んでもらったばかりの絵本を「読んで」と言うのでしょうか?
それは、自分が面白いと思ったことを大好きな人に知らせたいから。そして、大好きな人に一緒にいてほしいから。「本を読んでもらうのが好き。でもお母さんに読んでもらうのはもっと好き」と伊藤さんは言います。
0~2歳児に絵本を読む時は、子どもが絵をじーっと見ていたり、指を差したりした時に、「いちごが美味しそうだね」「青いトラックだね」などと、読んでもらっている子どもの気持ちに共感して応える「共感読書」を大切にされているとのこと。
ブックスタートの会場で赤ちゃんと向き合って絵本を読んで、「楽しいね」「笑ってるね」と、赤ちゃんの様子を保護者に伝えることも、赤ちゃんや保護者にとって大事なことだとおっしゃいました。
ブックスタートで届けている「絵本を楽しむ体験」や「絵本を手渡す」ことの大切さを、保育園での豊富な実践事例、子どもたちや保護者との心温まるエピソードとともに語られた伊藤さん。お話の内容は講演録として今後刊行予定です。
▷これまでの講演録は こちら
▷伊藤さんインタビュー(2021年)
■ NPOブックスタート 報告
コロナ禍における各地の取り組みとともに、コロナ禍のブックスタートでは、子どもたちのために何ができるのかという視点や連携が鍵となることをお話ししました。
コロナ禍の事例は、読みもの「コロナに負けない!」シリーズでご紹介しています。
■ 宮城県多賀城市 事例発表
顔と顔とを寄せ合って交流する機会が減ったコロナ禍。孤独を感じやすい保護者を支え、親子のふれあいや笑顔を増やす仕掛けを健診の場でつくりたいとの思いから、ブックスタートに着目し、2022年4月にブックスタートを開始しました。
キラキラした目で絵本を見つめる我が子に驚く保護者の様子や、絵本と読みきかせが持つ力を感じているという関係者の声とともに、コロナ禍だからこそ、ブックスタートが果たす役割は大きいと話してくださいました。
■ 兵庫県川西市 事例発表
乳児家庭全戸訪問でブックスタート事業を行う川西市。訪問の際はインターホン越しに聞こえてくる声のトーンにも気を配りながら、「一人で頑張らないで」という思いを伝えています。
「子育てがしんどい時ほど絵本を活用して欲しい」と語る担当者。年間約800家庭への訪問経験をもとに、保護者への言葉のかけ方や向き合い方、絵本をどのように手渡しているかについてお話しされました。
■ トークセッション
「保護者へのことばかけ」「フォローアップ」「ブックスタートの立ち上げ」の3つのテーマについて登壇者で話し合いました。「まずは保護者の気持ちを聴く”傾聴”からスタートしています」「あなたの味方ですよという気持ちを大切に」といったお話や、公民館で行う親子交流会で絵本を紹介する事例、事業の効果を連携機関と共有することの必要性、事業立ち上げの機運をいかに高めていくかなど、様々な視点から意見が交わされました。
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私たちも、本研修会を通して、地域の皆さんと一緒に知恵を絞り、最善を尽くしていきたいとの思いを強くしました。
今後もオンラインを活用した催しを行っていきます。ぜひご参加ください。