埼玉県三芳町では、2020年3月以降休止していた4か月児健診とブックスタートを、同年7月に再開しました。
再開にあたり、事務局である図書館の皆さんが意識したことは、保護者にも、ボランティアさんにも、安心してブックスタートに参加してもらえるようにすること。それに向けてのシミュレーションが、繰り返し行われました。
消毒や部屋の換気、マスクの着用などは徹底することにしましたが、課題になったのは、赤ちゃんへの読みきかせの「距離」です。まだ視力が十分でない赤ちゃんの反応を引き出すため、いつもは赤ちゃんに近い距離で絵本を読んでいますが、ソーシャルディスタンスを保つためには、2メートルほど離れる必要があるといわれています。
そこで着目したのが、180㎝ある「長机」。
机の端と端に椅子を配置し、読み手と赤ちゃんの距離が保たれるようにしました。加えて、通常のブックスタートの様子が分かる写真を用意し、「今日は感染予防のため離れて読みますが、おうちではこの写真くらい、絵本を近づけて読んでみてください」と説明。こうした状況でも赤ちゃんは思いのほか絵本をよく見てくれて、いつにも増して、保護者にも喜んでもらえたそうです。赤ちゃんとの心の距離は、近かった!ということですね。
※三芳町の事例はブックスタート・ニュースレターNo.71 でも紹介しています。
ブックスタート再開から8か月が経った2021年3月、埼玉県三芳町立図書館 館長の代田知子さんより、コロナ禍のブックスタートについておたよりをいただきました。
離れた場所から読みきかせをする際の、「コツ」も見えてきたそうです! ご承諾を得て、紹介いたします。
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ブックスタートを乳児健診の一環として位置付けている三芳町では、乳幼児健診が中止にならない限りブックスタート(4か月児健診時)・ブックスタートプラス(2歳児歯科健診時)を実施しています。
さて3月のある日は、23組に実施。
三芳町のブックスタートは、読み手からの飛沫を防ぐために、180㎝の長机両端に設置した椅子にスタッフと赤ちゃん・保護者が対面して座り、読みきかせを行っています。従来は、視力の弱い赤ちゃんによく見えるように絵本を赤ちゃんの顔に近づけて読んでいたので、「こんなに離れてしまって、絵本を見てくれるかしら」と心配したのですが、やってみると、ほとんどの赤ちゃんがちゃんと反応し、かなりの確率で笑ってくれるのです。
マスクをしたスタッフが、精いっぱいの笑顔で語り掛けるように読む声の温かさ、ことばの響きを、赤ちゃんは、ページをめくるたびに変化していく絵と一緒に受け止めて楽しんでいるようです。
経験を重ねるうちに、離れた場所にいる赤ちゃんを引き付けるコツも分かってきました。
例えば、読み始める前に離れた定位置から「この絵本を読みますよ」と表紙を見せますが、その時、絵本を見てくれない赤ちゃんがいたら、その赤ちゃんの顔に絵本をぐーんと近づける。赤ちゃんの目が絵本をとらえたら、ゆっくり絵本を読み手の手元まで戻し、「さあ、読みますよー」と、読み始める。この方法をとると、ほとんどの赤ちゃんが、離れた場所にある絵本をずっと目で追ってくれるのです。
こんな風に、赤ちゃんと絵本を楽しむ方法を模索しながら、職員もボランティアも、そして保護者も赤ちゃんも、コロナ禍のブックスタートを楽しんでいます。
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制約ある中で得られた経験は、アフターコロナにもつながるものがありそうです!