2018年10月、ベルギーのブリュッセルで行われたEUReadの年次総会に出席した私たちは、その後イギリスのロンドンへ移動。ブックスタートの推進団体であるブックトラストを訪問し、お話を伺いました。ロンドン南西部にある事務所の入り口は、カラフルな絵本がきれいにディスプレイされ、まるで絵本専門店のようでした。(写真:上)
▽ブックトラストにて
1920年代に設立された読書推進団体であるブックトラストは、1992年にブックスタートを開始し、2018年現在、イギリス*に生まれる年間65万人すべての赤ちゃんを対象にブックスタートを実施しています。それに加えて乳幼児以外の子どもにも本を贈る活動を行ったり、学校や地域の図書館、チルドレンズセンター**や保健センターなどと協働し、子どもに本の楽しさを伝えるさまざまな活動を展開しています。
今回の投稿では、2019年6月に予定されているブックトラストの新しいチャリティ・イベント「パジャマラマ」をご紹介します。
パジャマ姿で幼稚園や学校へ
これまで毎年6月には、「全国ブックスタート週間」が開催されていました。これは、年ごとに「海の中」「鳥の世界」「海賊」といったテーマを設定し、それに合わせて各地の図書館やチルドレンズセンターがおはなし会などを同時開催する、というものでした。
それが2019年からは「パジャマラマ」という、子どもと大人を巻き込んだチャリティ・イベントへと変わります。
「パジャマラマ」は、イベントに参加することを決めた幼稚園や学校、図書館やチルドレンズセンター、大人の職場などが舞台となります。イベント当日の朝、イギリス中で、ベッドからそのまま抜け出してきたようなパジャマ姿の子どもと大人が見られるかもしれません。パジャマラマは、「おやすみ前のおはなしタイム」のように幸せな時間を、1日中パジャマ姿で過ごしながら、みんなで本を読んで味わおう!というものです。
イベントの参加をウェブサイトで事前に登録すると、ブックトラストからイベント運営のヒントが書かれたブックレットや、カラフルなイラストでいっぱいのポスター、シール、風船などが無料で送られてきます。さらにイベント当日には、そうした全国各地の会場や難民センター、フードバンク***などを通じて、45万冊の絵本が子どもたちにプレゼントされる予定だそうです。
パジャマラマについて詳しくはこちら(外部サイト・英語)
「おやすみ前のおはなしタイム」をすべての子どもに!
イベントに参加する際には、一人1ポンド(約140円)をブックトラストに寄付します。つまり、みんなで全国的なイベントを楽しむと同時に、より多くの家庭に「おやすみ前のおはなしタイム」を届ける活動を支えようというキャンペーンなのです。
ブックトラストのコミュニケーション/キャンペーン部門の責任者をしているシニード・スコット・レノンさんは、パジャマラマの特徴を次のように話してくれました。
「イギリスでは、“自分が好きな絵本のキャラクター”といったようなテーマに合わせて、仮装して参加するようなおはなし会がよく開催されています。とても盛り上がりますが、実は親は準備が大変なんです。それに比べて、朝起きたままの姿で参加できるパジャマラマは、楽しくて、準備の必要もなく、親から大好評間違いなし!と思っているんですよ。全国的で大規模な読書推進のチャリティ・イベントは他に例がありませんが、ぜひ成功させて毎年恒例のイベントにしていきたいです。」
▽イギリスのブックスタートのキャラクター/クマの親子
パジャマのまま友達と過ごすなんて、それだけでもワクワクするのに、一日中、一緒に本を読んだりゲームをしたりもできるなんて、子どもからも大好評間違いなしでしょう。「パジャマラマ」は、イベントに参加する子どもと大人、そしてこのキャンペーンを知ることになる多くの人が「一緒に本をひらく幸せ」に想いを馳せるきっかけになるのではないでしょうか。
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*予算措置がなされているイングランドとウェールズで実施
**就学前の子どもの健診、ヨガやベビーマッサージなどのクラス、健康相談、育児支援などを行う公的な機関。イギリス全土にある
***品質に問題がないにもかかわらず、包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどの理由で、市場で流通出来なくなった食品を、企業からの寄附を受けて必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する活動/その活動を行う団体