世界のブックスタートの中でも、ひときわ目をひくパックを手渡しているのが、オランダのブックスタート「Boekstart」です。
2017年に活動の10周年をお祝いしたというオランダでは、2008年の試験実施のときから、丈夫な紙でできた小さなトランク型のパックが手渡されています。「パックをステキな贈り物として、喜んでもらいたい!」そんな思いを込めてデザインしたそうです。
ブックスタートの推進団体である「Stichting Lezen」が、EUReadで行った発表をレポートします。
図書館でのブックスタート
オランダの人口は 1,750万人、赤ちゃんの2016年の出生数は約172,500人。しかし、実際にパックを手渡すことができているのは、そのうちの36%にあたる62,000人にとどまっているとのこと。それはオランダのブックスタートの会場が、保健センターではなく、図書館だからです。
赤ちゃんが生まれると、自治体から各家庭に活動を紹介する手紙を出し、保健センターでの健診等の機会にパックの引き換え券を渡し、図書館への来館を促します。図書館では職員がパックを手渡し、同時に赤ちゃんの図書館利用登録も行われます。
ブックスタートの事業責任者であるマレイカさんは、ブックスタートに来ない家庭について、次のように話されました。
「保護者への調査によると、その理由は“知らなかった”“時間がない”“必要ない”とのことでした。また低所得層の家庭ほどそうした傾向が強かったこともあり、パックの手渡し率をさらに高めていくことが課題です。これからはソーシャル・メディアを活用して活動を告知していくことも考えています」
図書館のその先へ
2008年に始まった「Art of Reading」という国主導の読書推進キャンペーンは、0歳から18歳までをターゲットとし、教育・文化・科学省、保健省、社会雇用省が関わっています。ブックスタートもその一環に位置づけられ、パックにかかる費用は国の財源によってまかなわれています。
図書館の関わりが強いオランダのブックスタートでは、より多くの本と出会う機会を作ろうと、フォローアップ活動にも力を入れるようになりました。各地域図書館では、職員が保育園・幼稚園などを訪れて読みきかせ会をしたり、出張イベントを企画するだけではなく、そこで働く保育士や教師に対して、子どもとの本の楽しみ方を伝える研修活動にも力を入れています。
ブックスタートを始めてからオランダの図書館は大きく変わった、とマレイカさんは言います。
「より多くの赤ちゃんが図書館を訪れるようになったので、図書館の中に赤ちゃんの居場所を作り、職員はカウンターから出て積極的に保護者に話しかけ、アドバイスをするようになりました。」
▽図書館の赤ちゃんコーナー
オレンジ色のトランク
活動の開始から今まで、ブックスタート・パックであるトランクのデザインは少しずつ変わってきました。
オランダ代表のサッカーチームといえばオレンジ色のユニホームが有名です。オランダでは、王室の苗字にちなんでオレンジ色が様々な場面で使われているそうですが、実は図書館のシンボルカラーもオレンジなのです。そこでブックスタートの関係者が、活動をより身近なものとして感じることができるようにと、2014年からトランクも鮮やかなオレンジ色になったそうです。
人生という旅のはじまりに、本が入ったトランクをプレゼント。楽しい思い出でいっぱいになりそうですね。